×

[PR]この広告は3ヶ月以上更新がないため表示されています。
ホームページを更新後24時間以内に表示されなくなります。








     A

 僕は映画の登場人物なんじゃないか、そんなことを考える時がある。
 僕の行動の一部始終はどこかの映画館のスクリーンに映されていて、大勢の観客が僕のことを見ているのである。
 そして、僕に接する人間は全て台本通りにものをしゃべり、行動をしている。
 今、こうして学校からの帰り道ですれ違う主婦やサラリーマンは実はみんなエキストラで、僕とすれ違う、という演技が終わるとみんな舞台裏にはけていく。
 路地裏で、また黒猫に出会った。前と同じ黒猫だろう。
 今、この前と同じ不思議そうな顔で僕のことを見ている黒猫も立派なエキストラの一員なのだ。動物タレントの事務所か何かに所属しているのかもしれない。
 ――何わけのわかんないこと考えてるの? 暇なの?
 黒猫はそんな顔でこちらを見た。そんな黒猫に対して僕は仕草で伝えようとする。
「見てわからないかな。そりゃあ暇さ」
 そもそもなんで、こんな見るからに暇な妄想をしているか。それは僕が文字通り暇だからである。
 なぜ暇なのか。それは友達がいないからである。達とゲーセンに行くこともファーストフードに行くこともCDショップを覗くこともない、放課後の全ての時間をフルに使えるのである。
 と、ここまでが友達がいないことをプラスに考えられる限界である。
 そんな友達がいない僕はいつもこの帰り道は死にたさ一杯で歩いているのだが、今日はちょっと違う。
 ――なんだか、この前と違って今日は機嫌が良さそうだな
 黒猫は立ち止まって僕を見る。
「気のせいじゃない? 僕はいつも上機嫌だぜ?」
 僕は文房具屋の店先で横になった黒猫に別れを告げて、帰り道を急いだ。

<<前 次>>

「小説」に戻る
トップ画面に戻る