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  B 

 雨の日の教室というものはたいてい騒がしいものだ。
 普段は外でバスケットなりサッカーなりしている『ザ・体育会系』みたいなやつらが教室で昼休みを過ごしたりするものなのだ。
 ただそれだけでのことなのに、いつもの五十倍は教室が騒がしい気がする。
 普段の僕だったらそんないつもと違う騒がしさで『死にたい指数』はうなぎ登りなのだが、トモさんのおかげで最近は指数は比較的落ち着いている。だから今日は外の雨模様を楽しむ心の余裕があるってわけだ。
 今までは休み時間が始まったら「とりあえずあれやっとくか」的なノリで机に突っ伏して寝たふりをするという『秘技・俺に話しかけるな』をしていたのだが、ここ最近は外をぼんやりと見ながら放課後にトモさんと会うことを考えていた。
 トモさんは麻薬みたいなもんだな、なんてことを思う。
 すっかり僕はトモさん依存症に陥ってるかもしれない。だとしたら僕は世界で初めてのトモさん依存症の症例として一躍有名に――、まあ、そんなわけがないのだが。
 それにしても、早く学校が終わらないだろうか。もしも僕が不良だったら真っ先に授業をサボタージュして屋上に向かうってのに。
 ただ僕は今のところ地味に無遅刻無欠席の記録を更新中なのでここは我慢して授業を聞くことにする。
 それにしてもなんでこんなに授業ってものは退屈なんだろうか。
 これだけ退屈だとこの四十人いるクラスメイトの一人ぐらいは発狂して暴れだしてしまうような気がするのだが、ふと見回してみた限りではそんなことはないらしい。
 みんな脅されたかのように静かに教師の話に耳を傾けている。
 まあ、たぶんこの中の大半は耳を傾けるふりをしつつ、ほかのことを考えているか、睡眠をむさぼっているかのどちらかであると思うのだが。
 だって『アリストテレスの生涯』だなんて誰が興味を持つんだろう。それにしたって誰だよアリストテレス。どこが名字でどこが名前なんだよ。
 それともアリスさんとテレスさんで二人併せてアリスとテレスなのかな。
 もしかしたらお笑いコンビなのかもしれないね。あまり売れそうにない名前だなアリスとテレス。シュールなコントが似合いそうだなアリスとテレス。そんでキングオブコントで一次敗退とかしそうだねアリスとテレス。
 そんなことを考えているうちに雨がだんだんと強くなってきた。倫理の教師の声が小さいというのもあるけど、だんだん雨音だけが僕の耳に入ってくる。
 トモさんは今日は来るのだろうか。ふとそんな疑問が僕の頭の中に浮かんだ。
『クリーンタウン』で出会ったあの日から毎日のように僕らは屋上で放課後を過ごした。
 話す内容自体は本当にとりとめのないもので、今思い出してもどんな内容を話していたか、ということはすぐに思い出せそうにない。
 ただものすごく楽しかった。これだけは覚えている。
 今までずっと友達のいない、トモさん風に言うと『ぼっち』だった僕はこんなにも話をしたことなんてなかったし、こんなにも人の話を聞いたこともなかった。
 そして日が暮れると僕らはお互い帰路につく。
 彼女がどこに住んでるかは僕は知らなかった。逆に僕がどこに住んでいるかも彼女は知らない。
 なのに僕らはまるで親友のように二人だけの時間をすごしている。端から見れば不思議な関係であることは間違いない。
 だって僕ら自身も不思議に思っているくらいなのだから。

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