×

[PR]この広告は3ヶ月以上更新がないため表示されています。
ホームページを更新後24時間以内に表示されなくなります。





ぼっちな僕ら





     @

「死にたい」が最近の口癖だった。
 口癖と言っても特定の誰かに伝えたり、叫んだり、しゃべったりするわけではない。
 ただ一人きりで呟くだけに過ぎない。「あー、死にたい」って。
 朝起きても、朝ご飯を食べても、登校中でも、授業中でも、昼休み中でも、掃除の時間でも、下校中でも、夕食中でも、風呂中でも、寝る前でも、ふと口から「死にたい」の四文字がこぼれてきそうになる。
 だけど死にたいは死にたいのだが、自殺をしたいわけじゃない。
 自分でも面倒くさいと思うのだが、とにかく自殺はしたくない。なぜなら怖いから。
 自殺は怖い。
リストカットも、首つりも、飛び降りも、樹海も、毒物も、みんな怖い。だから自殺はしない。たぶんしない。というか絶対しない。
 でも僕の口からは「死にたい」の言葉が止まらない。
どれだけ自分勝手でめちゃくちゃなことを言ってるんだ、そんなツッコミをされてもいいわけすら思いつかない。
おっしゃる通りとしか言いようがない。でも僕「死にたい」とひたすら呟く。
 そもそも自殺はどうやったって他人に迷惑がかかる。
 電車に飛び込んだところで駅員さんや乗客のみなさんに迷惑がかかる、それにものすごいお金をJRに払わなければならない、よって家族にも迷惑がかかる。
 リストカットや首つりや毒物にしても、僕の死体を片付ける人に迷惑がかかる。誰も好んで死体を触ろうとは思わないだろう。仕事だと割り切ったとしてもその人への心理的ダメージはあるだろう。そんなダメージを与えては申し訳ない。
 樹海に入る行為自体はなんとなく他人にかかる迷惑度合いは低いような気がするが、実際問題としてそこまで行く交通費がバイトも何もしていない僕には工面ができない。
 だれか僕に交通費をぽんっとくれるような人はいないもんだろうか。たぶんいない。きっといない。絶対いない。
 どっちにしろ僕は自殺はできないらしい。っていうかしたくない。
 でも僕は「死にたい」の言葉を忘れない。
 そして、そこまであせって死ぬほどいやなことがあるわけではない。
 別にいじめを受けているわけでもないし、莫大な借金をしているわけでもない。
 でも僕の「死にたい」という言葉は留まることを知らない。
 どうやら僕が今退屈なことが大きいようだ。
言っては何だが、僕は県ではそれなりに上位の進学校に通っている。毎年、東大や京大に多くの合格者が出ていて、現に僕のクラスの多くは難関大学を狙っている。
 そんなやつが多いせいかどうかわからないが、僕のいる教室はとにかく活気がない。
 どうやら僕のクラスは「他人」という存在に興味がないらしく、自分の世界に入って机にかじりついているやつが多い気がする。
 そして僕の学校が男子校だということもクラスの活気のなさに拍車をかけている気がする。 もしかしたら女子という存在がいたらもっとこの学校自体の雰囲気も変わってくるのかもしれない。
 だけどこの学校にいる異性は家庭科のおばちゃん先生と現国のおばあちゃん先生だけだ。恋愛に発展する可能性は全くない。まだ宝くじで一等をあてるほうが可能性がある。
 僕は帰宅後の部屋でも「死にたい」を連呼する。
 あまり大きな声で言うと家族に聞こえてしまうので小さい声で。
 さらに念には念をいれて布団に丸まってつぶやく。
「死にたい死にたい死にたい死にたい」
 一〇回以上繰り返すともともと何の言葉なのかを忘れている。
 教室ではほとんど何も発していないので僕は一日のうちに発している言葉のほとんどが「死にたい」なのである。
 そんなことをしているから、ふいにこの「死にたい」を発してしまいそうになるから困る。
 通学中のバスの中、授業中の教室、掃除中の視聴覚教室。向かいのホーム、路地裏の窓、こんなとこで言えるはずもないのに。
 そんな場所で発してしまったら即、親と担任と僕との楽しい三者面談が執行されてしまうことうけあいである。
 いくら楽しい三者面談でも親を面倒な目にあわせたくない。
 だからそんな時に僕は小さく「しっ」と呟く。「死にたい」の「し」だけ発音しているわけだ。
「しっしっしっ」
 そんなことを呟いている僕はクラスメイトから見たら危険な存在でしかないだろう。
もしも僕がクラスメイトの側だったら絶対僕みたいなやつには近づかない。

次>>

「小説」に戻る
トップ画面に戻る